― アート、科学、未来社会、そして“世界の日常”を体験する場所へ ―
2025年4月26日、開幕チケットの最終日に大阪・関西万博を訪れました。
普段はプロジェクトマネージャーとして表現や制作に携わる立場から、今回は“現場目線”でこの万博を体験してきました。
「派手」「混雑」といったイメージとは裏腹に、会場はアート、建築、テクノロジー、文化体験、そして家族向けの空間が共存する、静かな発見に満ちた場所でした。
夕方からの入場:幻想的な光と構造体験
今回は17:00入場の「イブニングチケット」での訪問。
夕暮れからライトアップが始まり、建築群が闇に浮かび上がる様子は、まさに“未来都市”。
混雑も比較的穏やかで、建築や動線の構造をじっくり味わえる贅沢な時間帯でした。
パビリオン体験:予約なしで入れたフランス館
多くのパビリオンは事前予約制で、当日枠も早々に終了してしまいます。
今回はベビーカー利用によるファストパスにより、偶然にもフランス館に入場することができました。
展示の質は極めて高く、現代美術の国際展を見慣れている目から見ても「これだけで満足できる」と思えるレベル。
アートとテクノロジーが織りなす展示空間として、他のパビリオンへの期待も高まります。
Signature Pavilion:建築とアートの融合体験
万博会場には、建築家やアーティストがプロデュースする「シグネチャーパビリオン」が点在しています。
今回時間がなく観れませんでしたが、期間中お勧めしたい展示は以下の通り:
null²(ヌルヌル)|落合陽一プロデュース
カテゴリ:シグネチャーパビリオン(デジタルアート)
「デジタルと物質の境界」をテーマに、霧・光・振動といった現象とデジタル映像・音響が融合する没入型のインスタレーション。
建築そのものが空間表現となり、来場者の五感に働きかけます。
人気が非常に高く、SNSでも「予約が取れない」と話題に。来場予定の方は、事前予約を最優先で確保しておきたい場所です。
EARTH MART|小山薫堂プロデュース
カテゴリ:シグネチャーパビリオン(未来の食と物語)
「買い物」という日常的な行動を通じて、“いのち”や“食の未来”に触れる参加型パビリオン。
空間全体がメディア演出されており、商品棚やパッケージそのものがメッセージを持つなど、アート的な視点でも楽しめます。
一見ポップで軽やかな体験のなかに、深い社会的テーマが織り込まれています。
アートビオトープ大阪
カテゴリ:屋外インスタレーション(自然×アート)
自然と芸術が交差する静かな屋外空間。
人工物と自然が有機的につながるよう設計され、来場者の身体全体で空間を感じ取る構成です。
派手さはありませんが、没入感のあるアート体験として特におすすめ。時間帯(昼・夕方)によって雰囲気が変化するのも魅力です。
日本館(TEAM EXPO)
カテゴリ:ホスト国パビリオン(未来社会体験+メディア演出)
日本が描く未来の社会像を、映像・インターフェース・音響空間などを通じて体験的に学べる構成。
AI、ロボティクス、気候変動などの社会課題を取り上げながらも、メディアアート的な演出で来場者の“気づき”を引き出す展示が随所に見られます。
「アートとしての問いと社会との接続点」を探りたい人におすすめです。
いのちを拡げる|妹島和世プロデュース
カテゴリ:シグネチャーパビリオン(建築体験・環境芸術)
自然光や風を受け入れる“呼吸する構造”とも言える、軽やかな建築パビリオン。
素材・空気・人の動きが一体化する空間は、現代建築とランドスケープアートの中間のような体験です。
空間を“感じる”ことに敏感な人には非常に相性の良い場所です。
補足:空間体験としての万博
アートとテクノロジーの融合体験は、単なる「デジタル演出」や「映える展示」ではなく、
空間そのものに“問い”が埋め込まれているような構成が多く見られます。
「作品を見る」のではなく、「空間ごと作品の中に入る」ような構造。
建築、自然、デジタル、身体性が複層的に重なり合い、来場者ごとに異なる視点での発見があります。
どの建築も“展示”を超えた“体験そのもの”として成立しており、何度訪れても新しい発見が得られる構成です。
世界の日常に触れる:食、文化、遊び
また、時間の関係で訪れられなかったものの、家族が送ってくれた映像や情報によれば:
- 各国の料理が楽しめるフードゾーン
- 木製遊具や水場のある体験型エリア
- 民族衣装体験やマーケット
といった文化と暮らしの“世界の日常”が満喫できる空間が随所に展開されているとのこと。
“未来”だけでなく、“今この世界をどう楽しむか”という視点でも体験価値の高い万博です。
夜間演出:光と音による空中体験
19時台には花火の演出が始まり、建築群や空間全体が一瞬で祝祭空間に変化。
遠くからでも視覚構成とリズムに引き込まれ、静かだった会場が一気に高揚感に包まれる瞬間でした。
まとめ:今だからこそ体験したい“生成途中の未来”
一部はまだ建設途中でしたが、逆にそれが“生成される未来社会”のリアリティを伝えてくれる構成になっていました。
フランス館一つでも展示としての満足度は高く、建築・空間体験だけでも何度も訪れたくなる密度です。
特に、建築そのものが表現となっているシグネチャーパビリオン群や、空間体験として完成度の高い日本館などは、一つひとつの密度が高く、建築・アート・テクノロジーに興味のある人にとっては非常に価値ある訪問になるはずです。
また、パビリオンの総数は90近くにのぼり、1日では到底回りきれないボリュームです。
時間帯や気候によって表情が変わる展示も多く、テーマを絞って複数回訪れることで、より深い体験が得られる構成だと感じました。
これから訪れる方へのポイント:
- パビリオンは事前予約必須
- 夕方からでも十分楽しめる(光の演出が美しい)
- 家族連れでも安心して楽しめる空間
次回はさらに時間を確保し、複数パビリオンをじっくり体験しながらレポートをお届けします。