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Quality People, Quality Stories. Vol.2
2017.07.31 Storyteller

日本が世界に誇る”OMOTENASHI”と”お米”で、「想いをこめた贈り物」を日々届けている株式会社八代目儀兵衛 代表取締役社長 橋本隆志氏へインタビューを敢行。
乗り越えてきた壁やネットビジネスの難しさなどを聞きました。

—楽天やネットでのビジネスのなかでどのような段階を経て、今の八代目儀兵衛という会社や商品があるのか、そういったところを今回お聞きしたいと思います。
ネットでお店を始めることに関して、最初に当たる壁とはなんでしょうか?

 まずは「自分が何をしたいのか」というところが一番大事だと思うんですよね。「自分のしたいこと」と「自分の強み」がどれだけの強みなのか。
 例えば、自分が強みだと思っていても「いやいや、よその県行ったらもっと凄いやつおるで」という事実を知らなかったりとか。
だから僕も長年お米屋業をやってる中で、日本一の米屋になるんだという志も持っているので、家業を継いだ時からお米の「価格」で販売することよりも「美味しいお米を届ける」という点で日本一になろうと決めていました。なので「それをどう伝えていくか」だけの話だったんですよね。
 ただ、同業者を含めてこういった考え方持ってる人が周りにいなくて、相談できなかった。その上で「お米のギフト」という1つのマーケットを作れたという事実があるのですが、そのマーケットが大きくなってきた時に自分はどう対応するのか、自分のやってることが本当に世の中に浸透していくのか、という疑問はありました。それでも自分の信念は常に持ちながら次の展開まで考えなければ、うまく最初のフェーズでブレイクスルーできひんのかな、というのはわかりましたね。

—当初見えていたことと、今見えていることに変化はありましたか?

 見えている光景は常に一緒だとですね。そのボリュームがどれだけあるかということの違いだと思うんですよね。
「インターネットで物を売る」ということを自分でやると考えたなら、誰かと分業するのではなく、商品の企画から商品コピーまで全て自分で考えなくてはならない。それをやりきれるか、ということが一番大事かもしれません。最初から分業にしてしまうと、自分の伝えたいことが人によっては違う形で伝わって、本来のものでなくなってしまうこともありますから。
「売れるから仕方なくそれをしてる」という様に、途中で自分のやりたいことの本質から変わってしまうことがある。だからこそ、インターネットは、川上から川下まで全部見ておかななくてはならない。このリスクを自分で負えるかどうかというのが一番大きいと思います。

—橋本さんがそのリスクを張れると思ったポイントはありますか?

 いや、特にないですよ。後戻りできひんだけの話ですよ。リスクを張れないっていうことは、覚悟してへんだけの話だと思うんですよ。商売ってそんな甘くないと思いますし。自分でやりたいと思うんだったら、ネットショップのその仕事全て自分が責任をもってやれるっていう覚悟を持つかどうかだけの話なんですよ。
 その時点で「いや、俺できひんし、人に任せるわ、外注するわ」っと言った時点でアウトですよ。ただ唯一、ホームページを作ることは外注しました。デザインや見せ方などは、外注の宮田くんに細かく要望を伝えました。最初のころは彼に「橋本さん、ページをとりあえず一旦作ってから、こうじゃないんだってゼロに潰すのやめてください」ってよく言われました(笑)。
ホームページは本当に絵描くのとはワケが違う。本当に細かいところまで組み立てて組み立てて。それを「ゼロにしないでください」って(笑)

—なかなかの業者泣かせというか…(笑)。

 そうそう。だけど、初めてだからこそ自分の信念とは、というものを改めて考えることになりました。最初なんて、半年に1回ホームページを作り直してたんですよ。ホームページはデザインで物が売れるって思っていたので。しかし、SEOやお客さんの満足度も含めて、それをどう修正していくのかということを、自分で考えなきゃならないんだな、と思いました。

—ネットでの商売の難しさを改めて痛感されたということでしょうか。

 いやー、怖いですよね。今だとスマホという媒体を使って、僕らもこれをメインでやっている。では、このスマホファーストが、後何年持つねんっていう話になってきてしまう。次に全く違うデバイスが出てきてそれが主流になった時は、僕らのやり方自体が古くなるわけじゃないですか。
 消費者が新しいものを選択・消費していく中で企業はどこまで追いかけられるか、ということだと思うんですよ。だから、「ネットでやって、儲かってしゃあないな」と言われることもありますけど、言われる以上に投資しています。そういうことを理解できる人じゃないと、事業って成功しないと思うんですよね。

—なるほど。今、八代目儀兵衛さんはどれくらいのフェーズだとお考えですか?

 先ほども言いましたけど、一回りしてしまったので…成熟期と言いますか、まあ第三から第四にかけてじゃないですかね。そういう意味では第一から第二の時のキャズム(市場におけるメインストリームに乗る前にある深い溝のこと)も経験してきましたし、その時どう乗り越えてきたかということも自分の中で、本当にいろんなことが勉強になりました。
 ですが、次の歯車を回すのはやはり経営者でしかないなって思います。僕は経営者なので、全部僕が直接指示すればいい話じゃないですか。でもそれをしちゃうと僕の身体もたないですし、従業員も「社長が決めるんだったら、決定権や意思決定はもう投げます」となってしまう。そうしたら、人が成長しないじゃないですか。だから自分の考えは、本当はすべて答えは出ているんですけど、あえて言わない。それはやっぱり苦しいんですが。

—苦しいですね。受け取る側からしたら「早く言ってよ」という話にもなりますし。

 そうそう。相手に一旦、一通り言わせた後で「あ、ごめん。こうするし」って。でも、一つ選択肢を間違えることで本当に会社がピンチになりかねない場合があるので、そうならざるを得ない。それでも、俺はこの選択をしたけど、もしあなたの選択が良かったとしたならば、これはもう謝るしかない。「ごめんな」って。それを言わなきゃ仕方がないんですよ。
 従業員にトコトン考えさせるという訓練は必ずしなきゃならない。そうしなければ、会社は大きくならない。僕はいろんなことを自分でやれる、という自信を持っていましたが、企業が大きくなると自分だけのことではなくなる。本当にその人の適正に応じた仕事が回っていくことが大切になることもあります。それを人に任せるということは、その人の意志で動いてるということになるので、それはやはり尊重しなきゃならない、というもどかしさはやっぱりあります。

—第1、第2、第3とそれぞれのフェーズで一番困ったこととは何でしょうか。そしてそれをどう乗り越えたかを教えていただけますか。

 第1フェーズで一番大変だったのは、まずは仕組みづくりですね。ウェブサイトを立ち上げて、倉庫なんてないし従業員パートさん含めて5人くらい。仕事場は俺の部屋、みたいな。で、僕はどこで仕事するかと言うと台所。そういうことが二年くらい続いたんですよね。
 事業が大きくなっていく中で、お米の風呂敷を包む作業は、すべてパートさんに任せていたんです。しかし、ある時、それも限界が来てしまって。例えば、一人のパートさんが一日作業をして50個できました。二人のパートさんで100個できました。三人目が入った瞬間に、130個になりました。4人になったら160個になりました。5人になったら170個になった、とどんどん数が減って「パートさん×人数分」という図式に限界がきてしまったんです。
 結局、人が増えていけばパートさんの管理もしなきゃならないですし、かといって数が比例して増えているわけじゃない。これを自社で抱えていくのはどうだろうというところまで来たのが第2フェーズでした。
 そして売り上げが上がってくると、絶対的に人数がいる。作業員はいるが、自分たちも高いクオリティで人を求めるからこそ、それにふさわしい人がいない。100人の応募が来て、採用が0ということも事実ありました。
 採用に関して例えばIT関係だったら、大阪だ東京だっていう場所であればすぐに素晴らしい人が来てくれる。もちろん、お金の条件さえ合えばですけど。だけど、京都に関していえば、本当に大変で。その苦労を常に言ってたのが、確か第2フェーズのことだったと思います。

—京都の採用でいうと。社長ほどではないかもしれないですが、確かに難しさを感じますね。

 もう、大変でしょ?(笑)

—京都という土地柄なのか、京都+大阪で募集してる会社に京都の人はあまり来ない。大阪からも京都には来ない。京都だけで求人を出して初めて来る、という感じですね。

 だから、僕らもそこに困ったこともあって、事実うちの社員も京都出身者でも、結局何かしら大学とかそういったところで京都に残った子達を採用しています。他にはお米の仕事をしたいとJAを辞めてくる人もたまにいてるくらいで、求人に関しては一番苦労しますよね。

—第1フェーズでは仕組み作り、第2では人。その二つは、八代目儀兵衛さんの顧客対応、カスタマーサービスというところにつながっていくのかなと思うんですが。

 もちろんですね。

—顧客対応の重要性にものすごい気を使ってらっしゃるんじゃないかなと思いました。今回のサイトのリニューアルに関しても、御社はカスタマーサービスの担当の方がいらっしゃっていますよね。そこのところはどうお考えなのでしょうか。

 結局、インターネットってどこまでいっても競争なので、いかに他社と差別化するかというのが重要だと思います。そこの部分は、やはりお客さんとどう向き合うかだけだと思うんですよ。
例えば、非対面でも私たちはギフトを扱っている会社なので、文書一つにしても相手からきちっとした礼文で返ってきた際に、自分たちがそれに対して対応できないと、相手からして見たら、「ここの会社ってギフトで売ってるけど京都のこと知らんねや」「人の礼儀に対して知らんねや」「単なる商売だけか」と思われる。そのことが、会社を作る上で一番ダメなことだと思います。
 「お前のところは米が売りたいがために、ギフトにしてるだけやんけ」と思われてしまうと、右へならえになってしまう。だけど「いやいや、ちゃうねん」と。その上でいかに自分たちが他社との違いを見せるということを言葉にせず暗に見せることが、お客さんにとっての満足感と安心感につながる。
 例えばSEOの規約が変わって、グーグルにペナルティを出されてウェブサイトが検索に出てこなかった時でも、注文がそんなに落ちなかったというのは、おそらくSEOだけで商売してるわけではなく、きちんとブランドが成り立っていたというのが一番大きな要因かな、と思っています。デジタルでやっているからこそ、アナログな部分を大事にしようぜって。商品づくりも同じことが言えると思います。

—カスタマーサービスという専門の部署を置いたのは、何人ぐらいの規模からでしょうか?

 当時は社員ゼロでパート二人の頃からですね。

—5名くらいの会社の時からすでにあったということでしょうか。

 ありましたよ。僕の中で、1to1という言葉がずっと残っていて、考え方も一人一人違うから商品の選び方も十人十色になるので、やはり十人十色の接客をしなきゃならない。それを単なるステレオタイプでしてしまうことがこれからの時代は通用しないだろうと考えていました。それこそ20年前から自分が仕事するならば一人一人に向けた仕事をしたいと決めていました。
 なので、八代目儀兵衛という会社を作った時も一人一人に向き合うという考えから、カスタマーサービスを作ったんでしょうね。

—それこそ飲食店でも一次、二次、三次と合わせて六次産業みたいな形が少し前に流行っていましたが、その様に川上から川下まで社長ご自身が基本全部見ておきたい、ということでしょうか?

 そうですね、だから…握りたいんでしょうね。全方位の部分でやっておきたい。自分の中で見ておきたいというのはあるのかもしれないですね。  例えば極論ですが、事業が大きくなってカスタマーサービスも作ったが、それをアウトソーシングしてコールセンターにお願いする。これは何度も考えました。何度も考えたけども、値段もしかり、京都の業者の数の少なさもしかり、色々なところで壁に当たって断念してるんですよね。外注化できるところは自分たちで外注化してきたつもりなのですが、やはり譲れない部分ってあるじゃないですか。その部分がやはり自分たちが未だに大事にしているところじゃないですかね。

—業態、規模が変わればビジネスのあり方や存在そのものが変わってしまう、そういうところに怖さがあるというお話がありましたが、それを踏まえた上で、今後どのような展開を考えてらっしゃいますか。

 結局、僕がメディア化していって、その流れで「八代目儀兵衛という会社はお米の通販の会社」という認識が広がれば、今後デバイスがどう変わろうともここで何をしたいという想いは変わらないんだろうなと思いますね。

—橋本さんご自身のブランディングの仕方、特にお米ということに関しては全部任せておけというプロデューサー的な部分や、これまで亜流だったところがエバンジェリスト(伝道士)になっていくというところが、八代目儀兵衛さんがずっと残っていく理由だと思います。

 たぶんね。僕のことをお客さんがそう思ってるんじゃないですか。だから、お客さんからのコメントで「八代目儀兵衛さんのますますの商品開発を期待しております」と書かれてしまうと、お米ギフトだけではあかんのか、って思ってしまう哀しさ(笑)。

—期待されるとやらないといけないという使命感がありますよね。

 そう。だから、そういう使命感が僕には課せられていると思うんです。
それが「八代目儀兵衛」として、「八代目」を名乗っている以上、それをやり続けることが僕のミッションなのかなという気はするんですよね。

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